Virgil Hawkins(国際公共政策研究科(OSIPP)准教授)

なんでこの人たちにだけ怒りの感情が当てられて、アフリカの紛争が無視されるのかって思う。

プロフィール

NGOの一員としてアジア、アフリカで社会開発の事業に関わった後、現職。専門は国際政治であり、特に武力紛争とメディアの研究に取り組んでいる。主な著書は Stealth Conflicts: How the World’s Worst Violence Is Ignored (Ashgate, 2008)。ブログ(「ステルス紛争」)も執筆中。http://stealthconflictsjp.wordpress.com/

インタビュー

先生の研究テーマについて教えてください。
僕の研究のテーマは、紛争、アフリカ、メディア。世界最大級の紛争を抱えているアフリカがメディアに無視されているのはおかしいっていう怒りを原動力に研究しています。メディアも一般市民も、ある紛争に対して、「この紛争でこれだけ人が殺されて可哀そうだ、なんとかしなきゃ、悪い奴はとめなきゃ」って盛り上がることがあるんですよね。それを見るとすっごい矛盾を感じるというか。なんでこの人達だけに怒りの感情が当てられて、アフリカの紛争が無視されるのかって思う。
コンゴ民主共和国では1998年以降、540万人以上の死者を出している戦後最大の紛争が起きてる。でもその存在すらほとんど知られてなくて、メディアでもほとんど報道されてない。報道がないからこそ、これだけ紛争が大きくなるんじゃないかな。紛争で亡くなる人の八割九割は飢えや病気。その理由の一つには援助が入っていないのが挙げられる。もちろんコンゴに受け入れる態勢が整っていないって問題はあるけど、でも何百万人の人が死んでるのに援助が無いのはおかしいでしょ。

アフリカが特に無視されるのはなぜ?
人種的な問題も非常に大きいけど、生々しさが伝わらないのが問題。例えば9.11の事件では、飛行機が高層ビルにぶつかった。先進国の人々にとって飛行機は身近だから、事件の様子が生々しく想像できるし、他人事ではないように思える。でも、藁の家に住んでいるような生活は身近ではないですよね?アフリカに関しては、服装にしても肌の色にしても、色んな意味で実感がわかないものが多い。
それに、ニュースは報道の機関というよりもエンターテイメントに走ってしまう。チリの鉱山労働者が地下に閉じ込められた事件があるでしょ。救出された日の1日の報道量は、コンゴの世界最大の紛争の5年間分の報道量より多かった。あの事件はハリウッド映画的なストーリーで、しかもハッピーエンドだから盛り上がる。それに対して、アフリカの紛争は複雑で簡単に説明できない。だからメディアは、「どれだけ人が死んでいても、状況が複雑で盛り上がりに欠ける出来事は、取り上げても仕方ないね」って判断するわけです。アフリカの第一次世界大戦と呼ばれるほど大きな紛争が起きてるんだから、それだけでもメディアで取り上げろって思うんだけど。
日本では特にアフリカが無視されるから、人類学の対象にはなっても、国際政治の対象にはならないし、本も少ない。大学で研究してる人が少ないから、後継者も育たない。だから僕は今アフリカの交流の研究事業をやっているし、これからはどんどんアフリカに関する書籍を集めて学生が、いつでも読めるようにしようとしている。

学生におすすめの本は?
『When the press fails』 民主主義だからってメディアが自由だと思ったら大きな間違いだよってアメリカのメディアを批判している本。メディアが報道する内容は、お金や情報提供者との関係に加えて、読者からの苦情メールの影響もある。例えば、イスラエル批判を書いた記者には一日に3千件もの苦情メールがいくから、イスラエル批判に関してはメディアは非常に慎重。
僕は大量の苦情メールが持つ影響力に着目して、日本人が声をあげたらアフリカのことも報道されるんじゃないかと考えた。そこで、日本では取り上げられないアフリカのニュースを配信するメルマガを作って、こういうニュースを日本でも報道するように声をあげる人を増やそうとしている

◎学生向けの本

『When the Press Fails』 W. Lance Bennett
『日本人のためのアフリカ入門』 白戸圭一

◎自分のお気に入りの本

『闇の奥 』 ジョゼフ ・コンラッド

◎研究に欠かせない本

『states of denial』 スタンリー・コーエン

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