久保田裕之(人間科学研究科助教)

実は血縁関係の人と住む方が、他人と住むより大変なのかもしれないですね。

プロフィール


1976年群馬県生。早稲田大学在学中から、劇作家・構成作家として活動。その後、国際基督教大学(ICU)を経て大阪大学大学院へ進学。現職は人間科学研究科助教。専門は家族社会学、福祉社会論、政治哲学。とりわけ、現在日本でも注目を集めているシェアハウスに関する調査から、家族・ケア・親密性・共同性に関する理論研究を行う。著書に『他人と暮らす若者たち』(2009年、集英社新書)など。

インタビュー

家族を研究するとはどういうことですか?
家族というと、これまでずっと人を育てたり安らぎを与えたりする役割を担ってきたと思われていますよね。でも、近年の離婚が増えている状況や、子どもが育児放棄にあっている状況をみると、家族は本当にそうした役割を担えているのか、今後も担っていけるのかを改めて考える必要がある。こうした家族をめぐる社会問題の原因を解明したり、解決策を探ったりするのが家族研究です。
特に家族「社会学」では、近代に生まれた資本制・国民国家制・家父長制との関係から現代の家族について考えていく。
例えば、日本でもかつては育児や子どもの教育は母親の仕事とは限りませんでした。家長である男が、跡取りであり労働者であり次世代の国民である子供を育てる責任を負っていたし、乳母のような人もいた。
そういう歴史的多様性や、国際比較なんかをふまえて、今の家族をめぐる諸問題についてどう考えていくか。子どもに責任を負うべきは母親なのか、夫婦なのか、それとも行政なのか、みたいなことを考えていきます。

先生の研究テーマはなんですか?
僕の研究テーマはシェアハウスから家族を考えることです。
欧米ではお金がない時に住居をシェアするのは割と当たり前です。就職活動がうまくいかなくて、非正規とかバイトでしばらく暮らさなきゃいけないときに、安く住めたらいいですよね。でも、日本でシェアしている人はまだ少ない。喜んで他人と住めとは言わないけど、経済的・心理的にきつい時、仕方なくであれ他人と住むって選択肢が無いのはなぜなのか。実はこのことは、家族/他人の境界に関する制度や意識と深く関わっています。
僕は子供のころ、両親の間だけで育ってきたわけじゃないんですよね。割と親戚のところで過ごしたり、母親の友だちの家で育てられた。そういう経験とも関係しているのかもしれません。

先生自身もシェアされているのですか?
今は男女四人で、住んでいます。個室はありますし、家賃・光熱費・ネットあわせて月に3万円くらいだから格段に安いでしょ。お酒飲んでるときとかに誰かに居て欲しかったら、声をかけられるのがいい。家族に対して「酒一杯飲もうぜ」って言いにくいのを考えると、実は血縁関係の人と住むほうが他人と住むより大変なのかもしれないですね。

先生の研究に欠かせない本はありますか?
僕もすごく影響を受けた本で、『集合住宅と日本人』。日本の集合住宅の自治会や管理組合の話を通して、「みんなで仲良くするのがコミュニティ」っていう考えを手厳しく批判して、「共通の問題をみんなで集まって議論して解決する民主的プロセスこそが大事だ」と主張している。社会学はまさにコミュニティの学問なんだけど、「開く/つながる」っていうのは半分にすぎなくて、「どう閉じるか/だれを排除するか」を決定するのが同じくらい大事なんですよね。
ただ、筆者は家族を単位として捉えていて、家族と家族の間の共同性に民主的なものを求めている。けど僕は、家族の中や、シェアで一緒に住んでいる人と人の中にもその理論を適応すべきだと思ってる。

学生にお勧めの本は?
家族だけでなく、広く正しい/素晴らしいと思われているものを斜めに見ていくことが大事だと思うので、国家主義・新自由主義・保守主義のような、今では間違っている/悪いと思われているものから何を学ぶか、考えてみてほしいです。C.シュミットの『政治的なものの概念』、F.A.ハイエクの『隷属への道』、エドマンド・バークの『フランス革命の省察』の三冊をお勧めします。

◎学生向けの本

『政治的なものの概念』 著:C.シュミット 訳:田中浩
『隷属への道』 著:F.A.ハイエク  訳:西山千秋
『フランス革命の省察』 著:エドマンド・バーク 訳:半沢孝麿

◎自分のお気に入りの本

『自省録』 著:マルクス・アウレーリウス 訳:神谷美恵子

◎研究に欠かせない本

『集合住宅と日本人』 著:竹井隆人

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