阪大謎スポット 船舶海洋試験水槽

世界の物流の9割を支えるという船舶、その船というもののみんなが知らない、見ない外側、水に沈んでいる部分の研究・実験が行われる場所が阪大にある。今回の「阪大謎スポット」では、工学研究科船舶海洋コースの持つ実験設備「船舶試験海洋水槽」(以下水槽)にお邪魔しよう。

さて、今回の探検の前に読者には水槽なるものがどのようなものか予めイメージしておいてほしい。「船の実験をする水槽っていうんだからプールに船が浮いてるんだろ。」みたいな感じでよい。準備はいいだろうか。それでは今回の探検を始めよう。

海洋水槽のある建物は吹田キャンパスの理工学図書館近くにある。キャンパスマップで見たときにある、非常に細長いS3という建物がそれだ。建物の入り口に飾られた救命艇を横切り、中にはいるとすぐに巨大な水槽が現れた。実はこの建物は、入り口付近の少しが実験の準備場所になっているだけで、残りの部分はすべて水槽なのである。つまり建物同様水槽も非常に細長いのだ。その長さというと、入り口に立った僕達からは建物の向こう側、水槽の端がどうなっているのか確認できないほどである。水槽のサイズを尋ねてみると長さは何と100m、幅は7.8m、そして深さは4.3mもあるのだという。この時点で予想が外れた読者もいるのではないだろうか。真四角のプールのようなものではないのである。

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この細長い水槽を使って一体どのような実験をするのかというと、例えば船の耐波実験や、水の中での船や海洋構造物、ロボットの挙動の調査などである。入り口からみて一番奥、水槽の端に造波機が取り付けられ、それで水槽に波を起こすことができるのだという。

ところで肝心の船はどうなっているのだろうか。船の実験を行うのだから当然船が水槽の中を進むのだろう。ところが我々には水槽に浮かぶ船が確認できないのである。てっきり浮かんだ船に研究者たちが乗って、水面をじっと見つめているのだと思っていた。実は人が船を操縦して動かしたり、人が船に乗ったりはしないのだ。そのような方法では正確な実験ができないのだという。それでは一体どのようにして船を動かすのか。ここでまた読者諸君に予想してもらいたい。一体船はどのようにして動くのか。

僕達は疑問を抱えたまま水槽の上に取り付けられた台のようなものに案内された。台の上にはパソコンやモニタの他、よくわからない機器が載せられている。それらの機器を眺めながらしばらく待っていると、水槽にアラーム音が響いた。驚きとまどっている僕達にさらに驚きが襲いかかる。なんと台が動き始めたのだ。この台、動くぞ!

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実はこの台はただの台ではなく曳航台車とよばれるものなのだ。水槽の両脇にレールが敷いてあり、その上を水槽を覆ううにして曳航台車が動き回るのだ。もうお分かりだろうが、船はこの台車によって動かされる。正確に言うと船ではなく、船の模型である。本物の船を使うことはまずないそうだ。台車の中央は開閉できるようになっていて、そこに実験用の船の模型や計測器機などを取り付ける。そしてこの台車が秒速最大3mで長い水槽を行き来することで、船の模型が水に対してどう進むか正確に調べることが出来るのである。

さて、台車で水槽を往復し、再び入り口へもどってきたところであることに気がついた。水槽に付き物の生臭い臭いがないのである。よく見ると藻が張っている子もない。なぜなのか聞いてみると、窓をなくして日光が入らないようにし、また照明にも紫外線が出ない水銀灯を使っているからだという。それにしても綺麗である。頻繁に水を抜いて掃除したりしているのだろうか。しかしそんなことはなく、なんと1970年の水槽完成以来水槽の水を抜ききったことは一度もないのだという。どうやらろ過装置が実験中以外は常に稼働しているため、水は清潔保たれているようだ。

それにしても水を抜いたことが無いというのは驚きである。実はこれにはわけがあるのだ、先ほど説明した曳航台車のレールは非常に精密に水平に調整されていて、その傾き具合は100m間で1mm以内である。これほどの精密さが実験には要求されるのだ。この調整された状況で深さ約4m分の水を抜くと、水槽の壁にかかる土圧でレールが少しずれてしまうのだ。つまり水槽の水の圧力と外の土の圧力を含めてレールが調整されているので、水を抜くことができないのだという。

さて、船を見にきたつもりが動く台車に乗っていたり、想像以上に綺麗な水槽だったりと意外な事実を数多く確認することができた。このことを正確に予想できていた読者はいただろうか。この様に阪大に僕達や読者の知らない謎スポットがはまだまだ眠っているだろう。今後も謎スポットを見つけ出していかなけれ
ばいけない。そう僕達が決心した所で今回はひとまずお別れである。

最後に今回の取材・見学に協力していただいた工学研究科の先生、学生の方々ありがとうございました。

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