図書館今昔物語

大学附属図書館はあなたにとってどんな場所ですか?自習をしたり、レポートの文献を借りたり・・・え、空きコマの暇つぶしに使う?
今回は大阪大学総合図書館の変化を通して、ちょっとだけ真面目に私たちの学習のこれからについて考えてみたいと思います。

大学図書館革命今となっては想像することも難しいけれど、インターネットが普及する以前は、大学図書館は学生にとって情報を得るための数少ない場所でした。文献という形で知を集め、貸出やレファレンスサービスを行い、静かな自習場所を提供する。過去の研究成果を集めた文献と向き合い、考察を経て答えを導きだす学習が主流だった紙媒体中心の時代の大学図書館は、それに応じてごくシンプルで純粋な機能で成り立っていたんです。
80年代頃からは大学図書館にも各種電子機器が導入され始め、貸出・返却の電子管理化、館内蔵書のOPAC検索システムに始まり、コンピュータ、無線LANの設置、オンラインでの蔵書検索・予約システムの導入・・・と次々に電子化が行われました。私たちは今それらの機能を当然のように使っていますが、本格的にインターネットが普及し始め、紙媒体と同じかそれ以上の電子情報が行きかうようになった90年代、新たな学習ツールとしてそれを取り入れた図書館の変化はまさに革命だったといってもいいでしょう。

さらに阪大総合図書館の近年の変化として真っ先に挙がるのがラーニング・コモンズ(以下LC)、グローバル・コモンズ(以下GC)の設置でしょう。「便利になった」という一言で片付けてしまう人もいるかもしれませんが、紙媒体から電子媒体へ、というある意味作業の効率化にともなった変化とは違って、「利用目的が比較的自由」「会話OK」という今までの図書館のイメージとは異なるこれらコモンズが登場した背景には、私たちには到底うかがい知れない阪大と図書館側の決断がありました。

新たな学習の方向インターネット検索であらゆる情報が手に入る現在、一人机に向かって学習することの大切さは変わらないものの、実際に人と顔を合わせて、話しながら課題解決の方法をみつけるという能動的な学習のスタイル(アクティブラーニング)が重視されるようになっています。その流れを受けて、阪大に限らず日本全国の大学図書館がアクティブラーニングのための「コモンズ」 的共同学習スペースを設けはじめました。近年大学は従来の教育・研究機関としての役割と同時に社会に出るための人材を育てる場としての役割も求められるようになり、それを支える大学図書館もまた、文献という形で知を集め、貸出やレファレンスサービスをするだけではどうやら時代の要求にこたえられないと判断がされたようです。「図書館とはこういうもの」 という固定観念にとらわれず、私たちに求められる学習の変化に合わせた柔軟な状況対応がコモンズ設置の原動力となっていたわけです。

コモンズができるまで2012年秋に完成したGCは2009年に設立したLCの機能を強化・拡充し、より多くの学生の学習を支援するべく設置が計画されました。海外紙が読めるテーブル型端末や電子黒板のような最新の機器はもちろん、イス・テーブルの一つ一つにいたるまで職員さんの深―い配慮が込められています。一人当たりの作業スペースはどれだけ必要か、人と話すのに適切な距離はどのくらいか、簡単に動かせるように軽さも必要だろう、デザイン性も取り入れたい、などの考慮を重ね、また実際にLC利用者にLCの使い勝手やGCへの要望をインタビューしその意見も踏まえられました。さらに阪大の教育理念の一つである「国際性」もプラスして、多様な学習スタイルに対応できる空間づくりが進められ、LCとは色彩やイス・テーブルを含めて違った雰囲気の別の空間として完成したのです!
そうした設備面でのきめ細やかなサポートに加えて、頼れる先輩であるTA(Teaching Assistant)さんによる学習相談や各種講習会の開催などの人的学習サポートも充実しています。総合図書館が私たちに提供してくれているのは課題の発見から解決まで“誰かとコミットして互いに高めあい、答えを探していく”ための「リアル」な学習場所なのです。実際にコモンズに行ってみれば、あちこちのテーブルから話し合う声が聞こえたり、ホワイトボードに数式がびっしり書かれていたり、はたまたイベントが開かれていたりと今まで「図書館」では決して見ることのなかった学習風景が広がっています。

大学図書館の未来もちろん、コモンズ設置を望ましい図書館機能の変化ととらえるかどうかには様々な意見があります。学習目的ではない利用者が増えることでマナーが悪化したり、本当に利用したい人がコモンズを使えなかったりするという事態はすでに指摘されていますし、試験期間のGCの24時間オープンなども含めて従来にはない図書館の機能・サービスはまだ試行錯誤の段階です。時代の流れにただ流されるのではなく、本当に必要な変化を見極める過程にある今は、紙媒体から電子媒体への変化に続く大学図書館の大きな転機なのかもしれません。

市民の趣味や娯楽で利用されることがほとんどの公共図書館と違って、大学図書館は学生の学習を支えることが基本です。時代が求める学習のあり方にともなって大学図書館のあり方も変化し、学生の声を聴きながらベストのサービスを提供する。
私たちが学生として、さらには将来の社会人として大学生活を送る中で、常に柔軟に変化し続ける大学図書館はあらゆる学習の交流点となり、今後も私たちの学習に重要な役割を果たし続けてくれることでしょう。そのサポートを生かせるかどうかは、私たち次第です。

本記事作成にあたり、総合図書館・久保山健さんにインタビューし、興味深いお話を多く聞かせていただきました。この場を借りて感謝します。ありがとうございました!

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