喫茶大阪大学

まず、4月開催の第1回目のテーマは、「ニセ科学との付き合い方」。サイバーメディアセンターの菊池誠先生をお呼びして、鍋を囲みながらの開催となりました。「ニセ科学」とは、研究者の発言や実験データに基づいた話で、見かけは科学のようでも、実は科学ではないもののことです。例えば、ゲルマニウムやマイナスイオンが健康に良いという主張が挙げられました。

私自身データを用いた主張であれば信用できると思いがちだったのですが、それを反省したのが、例題として挙げられた、がんによる死亡者が年々増えているというデータ。ある化学物質の危険性を訴える人にがんによる死亡者増加を示すグラフをパッと見せられると、危険性を示す証拠として信じてしまいそうになりませんか。でもよく考えてみてください。医療技術の進展に伴って色んな病気の治療法が確立されると、治療法が確立されていないがんのような病気で死ぬ人が増えることを見落としてはいけないはずです。データがあるからといって、安易にこれは危険だ 、これは効果があるという主張を信じてはいけないのだなあと大いに反省させられました。

とはいえ、ニセ科学には効果がないかわりに危険もないのであれば、個人的に効果を信じていること自体には何の問題もないじゃないかとも思いました。しかし、ホメオパシーという、効果も危険もない民間療法で人が死んでしまったという話を聞いて、考えなおすことになりました。ホメオパシーとは、200年前にドイツで始まった民間療法で、ある病気の症状を和らげるために、似た症状を引き起こす成分をもとの成分が一分子も残らないくらいまで水で薄めたものを用いるというもの。今では臨床試験によって効かないことが十分に指摘 されているそうですが、ヨーロッパでは200年の伝統があり根強い 人気があるようです。自分の親もそのまた親もずっと頼ってきたものが、ある日いきなり科学的に効果がありませんでしたと言われても、なんとなく続けて頼ってしまう気持ちは分からないでもないです 。けれど、ある助産婦が新生児に、ビタミンK2欠乏症を防ぐためのビタミンK2シロップを与えず、ホメオパシーを実践したため 、新生児が死亡したという事件がドイツで起きたことは重く受け止める必要があると思いました。効果のないものに頼って適切な治療を行う機会を失った結果、最悪の事態になってしまうことがあることを、きちんと考えなければならないと強く反省する機会となりました。

 他にも血液型診断、EM菌の話など様々な話を聞いて、ニセ科学問題の重大性を噛みしめているうちに、美味しそうな鍋が出来上がりました。今回は一般の参加者もいらっしゃったので、放射線による被災地差別の話題などで言葉を交わしながら、一期一会の鍋を楽しむこととなりました。

続く第2回は6月開催で、「戦後最大の紛争について考える~メディアが報道しないコンゴの紛争~」をテーマに、 国際公共政策研究科のヴァージル・ホーキンス先生をお招きして 、お好み焼きを囲みながらの開催となりました。

コンゴ民主共和国では1998年から5年間で540万人という死者数が戦後最大の紛争がありました。540万人とは、皆さんご存じのイスラエル・パレスチナの紛争の100倍以上。この大規模の紛争の存在が、日本ではあまり知られていません。

コンゴの紛争での死者数の9割近くが、戦死ではなく、餓死や病死なのだそうです。紛争自体に介入するのは難しくても、紛争から逃げ難民となった人達は外国からの支援があれば助かったはず。しかし、支援を必要とする人がいることが知られていませんでした。そのために多くの命が失われたのです。

また、コンゴは鉱物資源が多く、私達の身近な製品の材料となる鉱物が、紛争の種になっているのも知られていません。例えば、環境に悪い 鉛の代替品としてスズの 需要が増えて価格が上がると、戦争のいい資金源として鉱山の奪い合いが起こり紛争が激化しました。

紛争以外にも環境汚染もひどく、エコカーに使われるバッテリーの材料であるコバルトの鉱山周辺は航空写真でコバルトの青が地表に見えるほど。私達の見える範囲では環境に良くても、グローバルな視点で見ると環境に配慮しきれていないことに、とても驚きました。しかし、こうした問題も、報道されません。

先生の調査では、日本で報じられるコンゴに関する5年分の報道量は、2010年に起きたチリの鉱山の事故と脱出劇の報道量1日分より少ないというので驚きです。そもそも、アフリカに関する報道が少ないそうです。 例えば2012年のNHKのニュースウォッチナインの半年の報道のうち国際ニュースは全体の9%で118時間だったのだけれど、そのうちアフリカの報道は唯一エジプトについての報道だけで 、それもわずか17分。2009年の 読売新聞の国際面では1年分の内3%、民放の報道ステーションは1.3%。外国でも、2000年の先生の調査ではBBCで8.5%、CNN で6%など。アフリカ大陸は世界の人口の15%を占め、国家数は世界の4分の1以上という大きな存在なのに、この報道量は少なすぎます。

何故こんなにも報道されないのでしょうか。その理由として、紛争における対立勢力間関係の複雑さゆえに報道しにくいことや、視聴者の関心がないことが挙げられました。けれど、たとえ複雑な問題でも、教科書などに掲載されていれば文脈はわかるし、報道されれば関心は沸くはず。逆に 、鶏が先か卵が先かという話ですが、私達が関心を持てばメディアも報道せざるをえない。メディアが報道するのを待つか、自分たちがメディアに訴えかけるか。そう締めくくって、先生は話を閉じ、会場はお好み焼きを巡る紛争へと流れ込みました。

第1回、第2回ともに、授業や自習とは違う気軽な雰囲気で、それでいて真剣に考えることができ、とても有意義な時間でした。次はどんなテーマがよいかなあと、運営する身ながら贅沢な悩みが尽きなません 。最後にお忙しい中、イベントにご協力いただいた菊池先生、ホーキンス先生、そして場所を提供してくださった石橋商店街に感謝の言葉を述べて筆をおきたいと思います。ありがとうございました。

 login