少年と少女のための学術論文入門

ふつう、学術論文を読むためには高度な専門知識が必要だと思われてる。それはもちろん真実なのだけれど、学問に触れ始めたばかりの”少年少女”が、誤読を恐れず、著者の意図とは違う楽しみ方で、論文を読んでみるのもいいんじゃないか。以下ではそんな読み方の提案しようと思う。

まずは適当なWebブラウザで「はてなブックマーク」 http://b.hatena.ne.jp を訪ねて欲しい。このサイト上部にある検索窓に”ci.nii.ac.jp”と打ち込むと出てくる、「ci.nii.ac.jpの人気エントリー」というのが目的地。「アニメにおける萌え因子特徴評価」「ぷよぷよはNP完全」「京都・鴨川河川敷に坐る人々の空間占有に関する研究」なんて、おかしなな文字列が目に入るはず。このページは、学術論文データベース CiNii の中から、どこかの誰かが「面白い」と思った論文を並べたもの。あなたにとって面白いかどうかは、これから決まる。

アンケート項目を楽しむ

並んだ奇妙なタイトルの中から「恋愛における告白の成否の規定因に関する研究」を読んでみよう。「考察」の章を読むだけでも得る所は多いけど、より面白いのは4ページ目にある「表2」。若者たちの親密度を図るために実施されたアンケートの項目と、その結果が並んでる。「告白の成否」を分けるというこれらのシチュエーションをながめるとき、ある読者は希望に胸を高鳴らせ、別の者は古傷をえぐられ、僕はニヤニヤする。
こんな具合にアンケート項目を楽しんでみるのが、最初の提案。

著者の愛情に触れる

「『ウルトラマン』における「正義」」は、端的に言って素晴らしい。「ハヤタ、君は何も感じないか」という印象的な引用で始まるこの論文は、特撮テレビドラマ「ウルトラマン」全39話に対して、ひとつひとつ、ウルトラマンの行動は正義であったかどうかを検証し、そのまま溢れんばかりのウルトラマン愛に引きずられ、著者の筆は日米の綱引きに翻弄される沖縄県の問題へと飛躍する。
特撮ファンならずとも、きっと著者の愛に心を打たれる、と思う。

ギャップに萌える

「現代表象文化論(1)」の読み所は、ズバリ「ギャップ萌え」。学術向け専門用語の奔流の中に混じる、各種萌え要素の解説やボーイズラブ専門用語。参考画像として引用される、同人誌の表紙などなど。学術論文と称するに十分な体裁と、オタク的な内容のギャップから来る面白さを堪能したい。

終わりに

最後に注意を一つだけ。いくつか論文を読んでみれば分かるけれど、ある程度文章を書き慣れた人は、どんな文章も”論文”風に書くことができる。もってまわった言葉づかい、断言調の文、それらしい数字とグラフ。そんな小手先のテクニックに騙されないために、自分が読んだものの内容と感想を、人に話したり、どこかに書いたりしてみて欲しい。言葉にすると、その文章への好悪がはっきりするし、他の人と感想が違えば、どうして自分がそんな感想を抱いたのか考える。全ての論文が指向する「人に自分の考えたことを伝える」ってことが、実は難しいのがよくわかる。

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