教授のコレクション

 
 この企画では大学の先生たちの「コレクション」に注目して、その普段とは違って見えるであろう姿に迫ってみることにしよう。
 今回取材を受けてくださったのは大阪大学生命機能研究科の近藤滋教授だ。近藤先生は様々な生物の複雑な形態が出来る仕組みを理論的に解明して、それを実験により実証することを目標にして研究を行っている。
 その一方で、先生は大の生き物好きとしても知られており、その生き物に関するコレクションもかなりのものであるという噂である。
 ……では早速、先生の生き物コレクションの世界を覗いてみよう。果たしてそこからは何が見えるのだろうか!?

プロフィール

近藤滋

大阪大学大学院生命機能研究科教授
1988年、京都大学医学部(本庶 佑教授)で博士取得。その後、あちこちを転々とした後、2009年より現職。
専門は分子生物学。趣味は理論生物学。
1995年、タテジマキンチャクダイの体表面の模様がチューリングパターン※であることを実験で確認する。
細胞工学HPでコラム“生命科学のあしたはどっちだ”を連載中。
※チューリングパターン→数学者チューリングによって発表された「化学反応が組み合わさると、それが定常波を作る場合があり、それが生物のパターンを形作る」という考え方。シマウマやキリンの模様なども全てこれで説明できる。

 

インタビュー

 教授室に入ると、先生は笑顔で私たちを迎えてくれた。
そして、まず我々の目についたのは貝殻などの先生のコレクションが満載の棚であった。

 これは凄い!先生、この中で先生イチオシの品ってありますか?

 えーと、なんだろうな。僕の持っている物の中で珍しいものってのは結構色々あるんだけれどねぇ……。
 これがホネガイ。これだけだったら大したこと無いんだけれど、これは、ホネガイの幼体の貝殻(写真①)。

写真①

 あら、かわいい。しかし変わった形の貝ですね。これって何処で見つけられたんですか?

 これはですね、何と卵から育てた人からもらったんです。これは結構自慢かもしれない。 

 貝を卵から……!?いやはや、恐ろしい人が世の中にはいるものですね。
(と、我々が世界の広さを実感している間にも近藤先生は話を続ける。)

 あとはなにかなあ。三葉虫やオウムガイなんかは買えるもんな。
 ……これ、クマザサガイ(写真②)って知ってる?

写真②

 これって……貝に貝が付いているように見えるのですが。

 これは貝が自分で付けるんだよ。土産物のために(人が)後から付けたんじゃないんだよ(笑)

 貝が自分で付けるのか……これは面白い。貝にとってはファッションみたいなものなのだろうか?
しかし一口に貝と言っても色々な形のものがあるんですね。
先生が貝を集めるのはやはりそこに魅力を感じるからなのでしょうか?

 うーん、貝は好きかどうかっていう問題よりも、仕事だからなぁ。
 僕は動物の形が本業だから。
……で、そうなると複雑な形態よりも単純な形態のほうがやりやすいじゃない?
つまり、貝のように数式で表しやすい形のものだと、シミュレーションつくるのもすごく簡単だよね。
そして、こういう形がどうやって出来るかってのを考えるとき、実際に色々な貝があったほうがいいじゃない。
単に貝の写真とか見ても立体だからよく分からない。そのために貝を集めています。
さらに、僕が貝を研究しているのは、この延長線上に骨を形成する原理があると思うからだよ。

 確かに、言われてみればさっきのホネガイは脊椎動物の背骨と非常によく似ていますね。
なによりも、このコレクションが全て仕事上の物だったってのが驚きです。

 ただ、僕の場合は趣味と仕事が限りなくオーバーラップしているってのはありますね。
趣味がそのまま仕事になってしまった、といった感じです。

 なるほど、先生にとっては趣味と仕事がほぼ同一の物であるってことですか。
でも、それって非常に理想的なことですよね。
では、先生の趣味であり仕事でもあるそれら生き物のもつ魅力を教えてください。

 やっぱり動かないものよりも、生きて動いて、歩いたり、飛んだりするものの方がさ、
問答無用に価値があるじゃない。
例えば、ダイヤモンドがここに置いてあるのと、ここにカエルが1匹ピョンピョンしてるのと比べると、
金銭的価値を全く考えなければ、誰だって絶対カエルの方に価値があると思うじゃん。
 結局これだよ。生き物が好きってのはそういうことだよね。
他の物よりも生き物の方が見ていて飽きないし、メチャメチャ不思議だし。
だからそれについていろいろ知りたくなるわけじゃないですか。


 

教授のコレクション番外編!

 数ある先生のコレクションの中から、編集員が特に「イカス!」と思ったモノを少しだけご紹介。


ビスマスの人工結晶。四角い螺旋状の構造が見られる。

<
アンモナイト。
表面に「菊紋」明治時代の生物図鑑の復刻版。非売品。と呼ばれる、規則的な模様がみられる。


タテジマキンチャクダイ。
先生が今の仕事に就くきっかけになった魚で、先生にとっても特別な思い入れがある魚である。


明治時代の生物図鑑の復刻版。非売品。

……と、このような感じで近藤先生のコレクションを見てきた訳だが、いかがだったろうか?
きっと皆さんが思い描いていた「大学の先生」の像とは一味も二味も違う、愉快な姿をそこに見ることが出来たのではないだろうか。これを読んで、近藤先生に興味を持たれた方は、ぜひとも先生のラボのHPを訪れてみることを勧める。
 そして、皆さんも授業などで少しでも「面白いな」と思える先生がいるならば、それだけで終わらずに、実際に会いに行ってみてはどうだろう。そこでは授業では見ることのできない、先生たちの普段とは違う姿というものを垣間見ることが出来るかもしれない。


文:ツヅキ/理学部B1


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