「合ケン。」報告


合同研究交流会報告

 

5月@大阪府立大学

 5月24日、大阪府立大学にて合同研究交流会、略して「合ケン。」が開催された。
発表者は府大生と阪大生から合わせて5人集まり聴衆としての参加者も多く、会場は満員となった。
聴衆には学部生、院生、大学講師に社会人まで色々な人が集まり、質疑応答のときにはそれぞれの視点
から多様な質問・議論が飛び交った。合ケン終了後も 参加者同士の会話は絶えず、交流会としての機能
もきちんと果たしていた。

「ベトナムの家庭におけるエイセイカンコウについて」
  西かおり(大阪大学大学院 人間科学研究科 修士1年)

 近年SARSやBSEなどの新型感染症が流行するベト ナムにおいて医療機関が衛生慣行(手洗いうがい等 の習慣)を定着させようにも、機関から人々への一方 的な啓蒙には限界が見えている。発表者は現地人の 衛生行動に対する認識、衛生教育が家庭へどのよう に伝わるかを長期のベトナム単身滞在を経て調査し ていた。教育者と現地人の相互理解なくして解決は出来ない、と発表者は語る。現在も衛生慣行を啓蒙する新しい人間学的アプローチを模索している。

「発毛実感?だけじゃない毛包のふしぎ」
  市川智彩(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科修士1年)

 生物の皮膚の中で毛をつくっている毛包、そしてこの毛包が分化・成熟する過程で発現するA3タンパクについての研究 をしている。特にA3タンパクについては細胞内での働きや毛 包に必要かどうかなど未知の性質が多く、このタンパク質が持 つ働きを解明できれば発毛や脱毛の原理が分かるかもしれないとされている。発表者はこれからA3タンパクの構造分析、 相互作用の解析を始めようとしている。

「光合成生物によるセシウム吸収能の評価」
  安東翔平(大阪大学大学院 薬学研究科 修士1年)

 東日本大震災に端を発する放射性セシウムの土壌 汚染は現在、ヒマワリを植えることで除染が行われて いる。しかしその効率は意外と悪いのが現状である。 そこで、私たちの身近にいる光合成細菌のセシウム をよく吸収する性質に着目し、放射性セシウムの除染 に有用かどうかを発表者は調査した。どの菌もかなり 期待できる成果を上げたが、菌での除染は人間が内 部被曝する可能性を拭えないなど実用化には慎重に 考えるべき課題があるようだ。

「低投入型作物生産に向けて-混作の可能性-」
  樽井 新(大阪府立大学 生命環境科学研究科 修士2年)

 作物の生産には窒素が不可欠だが、現在の窒素肥料生産 法ではエネルギー消費が激しく持続性に乏しい。持続可能な 作物栽培のため、無機化学肥料の投入量を減らす新しい手法 としてマメ科の混作実験を行った。マメ科植物は窒素を体内 に固定する働きを持つ。育てたい作物と混ぜて植えた後、 育ったマメ科を根が残るように刈ると作物へ窒素が行き渡るという原理だ。実験は無事成功し、いまは農家での実用化を検討している。

「共感と寄付のあいだ」
  佐々木周作 (大阪大学大学院 超域イノベーション博士課程プログラム1年)

 NPOや研究機関への資金援助、そしてチャリティオークショ ンでの入札の中に働く個々人の利他的な価値判断、そこから 多様に生まれる「寄付」についての発表だった。行政からの支 援金が仕分け・削減されつつある昨今、NPO・研究機関は民間からの寄付にも注目するべきである。現在はネット上での個人の寄付行為と、それに基づく資金調達法を具体的な研究対象と発表者は話してくれた。



7月@大阪大学まちかねておはこ祭

 こちらは7月15日に阪大で開催された、まちかねておはこ祭での合ケンの模様。
大阪大学会館アセンブリーホールにて行われ、発表者は阪大生から3人が集まった。
今回の合ケンは開放型の会場だったこともあり、府大のときほどには発表者と聴衆の交流を果たせなかった。 しかしながら今回のおはこ祭のように、大学生ではない一般の方も多く集まる中での研究発表はとても有意義なものであったと思う。

「シュウカツにおける『自分さがし』のわな」
  妹尾麻美(大阪大学大学院 人間科学研究科 修士2年)

 就職活動において2000年以前は適性診断・志望決め のため必要とされた自己分析が、現在では面接用の自己 アピールをするための材料へと変化している。そうした自 己分析が合否を決する環境での「脱落するのは無個性な 自分の責任」という風潮を批判する発表であった。「職に 就くための活動」が「能力証明ゲーム」と化しているなか で、就活生がそもそも就活というものをどのように認識し ているか、発表者は現在も調査している。

「東日本大震災に対する復興計画案」
  妹尾和俊(大阪大学大学院 工学研究科 修士1年)

 東日本大震災による津波で甚大な被害を受けた 岩手県釜石市の復興案として、低地と高台をつなぎ 津波からの避難経路となる階段のデザインを発表 した。避難しやすくするため、階段を非平行にするこ とで広いスペースと緩やかな勾配を作っている。ま た階段内部にできる空間は利用スペースとして空 け、津波の際はそこに波が溜まり高台に被害が及ば ない構造だ。実用性と洗練された外観を両立する 非常に素晴らしいデザインであった。

「性ってなに?」
  小住大生(大阪大学大学院 人間科学研究科 修士1年)

 人間の性を区別するとき、何を基準とするかによって 事態が複雑になりうる。たとえば身体だけなら男と女の2 つだが、自己認識・性的指向という心の性は男・女の「両方に当てはまる」と「どちらでもない」の2つも加わる。身 体と心の両方を考慮すると性は男・女に二分できないのだが、「自然」とみなされる性のあり方は身体と心が一致 する場合だけである。これから研究を始める発表者は、「不自然な性」がなぜ不自然と認識されるのか、「不自然 な性」の人々が社会をどのように感じているのかを調べ ていきたいと語る。
 

文:ニッタ/理学部B1


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