起業家育成セミナー 集え、阪大起業家たち

何を実現させたいのか-必要なのは同志との「絆」や達成への「力」

2011年8月12日に、大阪大学VBLと協力し、
豊中キャンパスにて起業家育成セミナーを開催しました。
企業を志す学生。
環境系ベンチャー創始者。
社会起業家。
チャリティ事業経営者。
セミナーで語られた、それぞれの方の言葉をお伝えします。

高尾正樹(日本環境設計専務)

プロフィール
綿製品からバイオエタノールをつくるリサイクル技術を開発。
岩元氏(現•社長)と、繊維製品をリサイクルする環境ベンチャーとして日本環境設計を設立。
現在、良品計画(無印良品)、イオン、丸井など8社と組み、不用になった衣類を店頭で回収し、エネルギーとして再利用する「FUKU-FUKUプロジェクト」などを展開している。

「いけそうんじゃないですか!」って、酔って言っちゃったのが運の尽き(笑)
僕と社長は、僕が大学院生のときに異業種交流会みたいなところで会った。それで意気投合。
うちの社長が「繊維リサイクルやりたいねん。今は繊維をリサイクルしても碌なもんができん。
リサイクルを進めるには、新しい技術がいる。トウモロコシから作れるんやったら、繊維からもエタノール作れるんちゃうか」
みたいなメチャクチャなことを言ったんです。ぐだぐだ飲んでるときに。
んで、僕も酔ってたから「いけそうじゃないですか!」って言ったんが運のつき(笑)
そこからずっと繊維からエタノールをつくるっていう技術を、阪大にいてる兼松先生と相談しながら作っていって起業しました。

技術だけじゃなんもできません
技術ありきで会社やろうと思うと、なかなかうまくいかれへんと思います。
繊維リサイクルを進めるには新しい出口がどうしても必要だ。それには、技術開発しかない。
僕たちの場合は、そういう背景をうけて技術開発をしてます。
どれだけいい技術があったとしても、社会に受け入れられんかったら意味がない。
すごい技術があってもね、その技術にニーズがなかったら、事業は立ち行かないんですよ。
事業と技術のバランスが、大事なんです。

会社はやっぱり準備です
ビジネスモデルつくって、販路開拓し、技術を開発して、満を持してスタートするっていうのがすごく大事。
社長はサラリーマンやりながら、僕は奨学金で学生やりながら準備するっていうのを3年やって、
大手商社と長期的な契約が取れるっていう確約ができて、それからやっと会社をつくりました。
ノリや勢いでやるってのも大事だし、たのしい。
けど、会社はね、やっぱり準備が肝心だと思います。

大企業ときっちり付き合いましょう
日本のベンチャーは大企業アレルギーみたいなんがある。
けど、規模とシェアの確保をしなければ、事業は大きくなりません。
ベンチャー単体ではそんなに大きな規模は確保できない。
だから、社会にインパクトを与えるような事業がしたかったら、大きなマーケットを支配している大企業と組む必要がある。
たしかに大企業が入ってくると、言われた仕事しか出来ないとか、いろいろある。けど、それだけではない。
こうやった方が良いですよ、儲かりますよっていう僕らの考えを、大企業側に理解させて向こうを動かしていくっていうことが、大きいことをやりたかったら必要なんです。

社会そのものを作っていくという感覚
有機物を全部リサイクルして、そっからエタノールつくって、それをプラスチックにしていくっていうことを僕はやりたい。
これができると、いま可燃ゴミとして燃やしているものから、国内の年間需要と同じぐらいのプラスチックがつくれるんです。
そうしたら、海外から原料を輸入する必要がなくなるかもしれない。
今までゴミで出していたものを循環させてプラスチックにすると。
それを事業化するのが僕の今の夢です。
それができる技術を作るのも、もちろん大事なんだけど、この技術をうまく使っていける社会そのものを僕は作っていきたい。
こういうような感覚で、ベンチャーをやってくと、なかなかおもろい。
そういうこと考えて動いてるような人材を、僕は大事にしたいと思ってます。

福井佑実子(株式会社プラスリジョン代表取締役)

プロフィール
プラスリジョンは、障害のある人が働く場において、どのような合理的配慮を含む環境にあれば、障害が「ある」から「ない」にかわるのか実務の場所で実証しながら、障がい者の働く場所づくりをすすめる事業団体である。
「オニオン・キャラメリゼ」というタマネギペーストの製造を障がい者の働き方のひとつとしてビジネスモデル化することに成功。
障害のある人たちの就労トレーニングのための事業モデルとして、各地で導入されている。

障害のある人と外の世界の接点を作る
起業家になるつもりは全然なかったです。
私が通っていた箕面小学校は、障がい者とか健常者とか分けなくて、みんな同じクラス。
今で言う重度の発達障害とか知的障害のある同級生もいたけど、クラスメイトたちは必要なときに必要な分だけ手助けするというのを、自然にやってた。
それでクラスは何の問題もなく回っていたし、子どもの頃はそれが当たり前だと思っていました。
大人になって社会に出てから、実は私、阪大に勤めていたんですね。
その時まわりに産学連携のインキュベーターの方たちがいたんです。
その人たちと、ある時「障害のある人たちと、つきあった経験ある?」って話になって、そしたらほとんどの人がなかった。
私みたいな経験は少数派だったんです。
それで、ああ、じゃあ、今まで接点がなかった、こういう優秀な人たちが障がい者の問題に知恵を貸してくれるようになれば、
障害のある人たちを取り巻く問題は解決できるんじゃないかなって。そう思ったのがきっかけです。
少しだけできることをみんながすることで社会はかわる。
接点を、わたしがつくっていきたいなって。

環境さえ整えばもっといろんなことが出来る
阪大にいる時、仕事の一部を福祉施設にアウトソーシングしてみたんですよ。
最初はうまくいきませんでした。納期や品質管理の問題とか。
それで、わたしは発注側だけど、むこうと一緒に仕事をするから、このままやらせてくださいって、大学側にお願いしてやらせてもらった。
そうしているうちに、仕事を細分化したり、ルールを決めたり環境さえちゃんと整備されていたら、障害のある人もきちんと仕事ができるんだっていうのが分かってきた。
それじゃあ、もっといろんなことを整備したら、もっといろんな仕事ができるようになるんじゃないのって思って、のめりこんで、今に至ります(笑)。

障害って環境が決めるものだと思うんです
障害って、個人に属するものじゃなくて、環境に依存するものだと思うんでよ。
その人、個人が「障害」というものを持っているのではなくて、まわりが「ある」という環境しかつくれなかったら、「ある」ことになる。
けど、そんなの問題ないって環境さえあれば「ない」ことにできる。
だから、障害は「ある」から「ない」に変えられるものだと思っています。
オニオンキャラメリゼという事業モデルも、そういうことを実証するひとつのモデルです。
それを通じて、そういった視点があるんだってことを世の中の企業の方や、一般の人に知ってほしい。
そうしたら、働く障害のある人も、雇う側の企業の人たちも、お互いハッピーになると思います。

どういうふうに起業するか
「オニオン・キャラメリゼ」の事業化にあたって、阪大で働いていたころの仲間にいろいろ助けてもらっています。
マーケティングとか。工学研究科の有志の人たちが、障害のある人が一人で仕事をこなすための補助器具を必死で考えてくれたこともあります。
自分の不得意なことがあればチームを組めばいいと思います。
起業家はいけいけどんどんの人がやっぱり目立つけど、スタイルも立ち位置も選べると思う。
自分にあったスタイルや立ち位置を選ぶことも、一つ大切なことじゃないかと思います。

佐藤大吾(一般財団法人ジャスト・ギビング・ジャパン代表理事)

プロフィール
JustGivingはイギリス発の世界最大級の集金規模を誇る寄付サイト。
このサイトを使えば、自身の活動をとおして、寄付を呼びかけることが簡単にできる。
有森裕子さんや古田敦也さんといった有名人の参加で注目をあつめている。
また、東日本大震災時においても力を発揮。
NPOへの支援の乏しい日本において、大きな役割を担うものとして、期待されている。

NPOの悩みはどこも同じ、お金がないこと
僕はNPOを十四年やっているけど、なんとかずっと黒字でやってきた。
すると、いろんなNPOから資金繰りの相談がくる。
もともと僕は株式会社を起こしたのが最初だから、企業の経営者の知り合いが多い。
それで、「社長、前から環境のことやりたいってゆうてましたけど、こんないいNPOがあるんですが・・・」って感じでいろんなNPOと企業を引き合わせてきた
日本のNPOは英米に比べて規模が小さい。
理由を調べると、日本はNPOへお金が流れる仕組みがない。
英米には、NPOがお金を集めやすい仕組みやアイデアがたくさんある。
で、英国でJustGivingを見つけて、「この仕組みを日本に持ってこよう」って思った。
あとはメールして、電話して、直接行って、力押し。
はじめは返事がないし、やっとの思いで会ってもらっても警戒されてるし、2割の英語と8割の関西弁で必死に口説いたけど、遠い国から来た謎の言葉を使うイエローモンキーって思われてたと思う(笑)。
けど、何回か通って仲良くなって、日本で事業を展開するビジネスパートナーとして僕が選ばれた。
一番大事なのは信頼。いっしょに仕事ができる奴なのか、見極められてたんだと思う。

日本はお金が流れない
日本はもうお金がなくなっちゃって、税金で福祉とか医療とか、すべての社会問題をカバーすることは不可能。
だから、NPOが税金じゃなくて、自らお金を集めることで、カバーしないといけない。
日本でも、NPOにちゃんとお金が流れる仕組みがつくれたら、今、企業に勤めている優秀な人材がNPOに来るようになって、これからの社会を担う素晴らしいNPOやソーシャルベンチャーがたくさん生まれると思う。
そういうことができる仕組みを作りたい。
イギリスはね、昔ほぼ経済破綻状態に陥って、いろんな改革が進んで今のカタチになった国で、今の日本にとってすごく参考になるところが多い。

やる気がある奴は連絡を
今日本でやる気のある若い人材が社会起業とか、ソーシャルベンチャーへの興味を高めているのはとてもいいことなんだけど、残念ながらビジネスモデルがめちゃくちゃなことが多い。
要するに誰がお金をだすんだっていうことなんだけど、このビジネスモデルが出来上がっていないから、頑張っても頑張っても経営が安定せず、そのうちしんどくなってつぶれてしまう。
海外に成功モデルがあるなら参考にすればいい。
提携したっていい。僕もJustGivingという成功モデルを日本に持ってきた。
海外にはまだまだ日本に来ていない優れた成功モデルがたくさんある。
やる気のある若い人材と成功モデルが合わされば、きっと結果が出るんじゃないかと思うから、僕はこれをライフワークにしている。
やる気があるけど、ビジネスモデルに困っている人がいたら連絡してほしい。
おもしろいネタはなんぼでもある。

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